海域における粒状有機物の組成・動態の研究と環境モニタリングへの応用

海域における粒状有機物の組成・動態の研究と環境モニタリングへの応用

海水中には,植物プランクトンと動植物遺骸などからなる粒状有機物が漂っています.これらは,生態系の中で様々な働きを持っています.それは,動物プランクトンの餌となり,さらに小魚,より大きな魚へといった具合に,食物連鎖を通じて様々な動物の生産・生存を支えています.また,カキやホタテといった貝類の養殖は各地の沿岸海域で盛んに行われていますが,それらが餌を人為的に与えずに生産されるのも,海水中に餌となる粒状有機物が存在しているからです.一方で,そのような有機物はやがて沈降し,枯死・分解していきます.その過程では,有機物の分解にはたらく細菌類の呼吸などにより,海水中の溶存酸素が消費されます.その量が多ければ,海底付近では酸素が枯渇し貧酸素状態となって,そこに生息する動物が大きな被害を受けることになります.
 このように粒状有機物は,生物生産と環境問題に強く結びついています.このような背景から,私たちの研究室では,沿岸海域で粒状有機物がどのような組成を持ち,どのような挙動をするかを理解するため,調査・研究を進めています.また,粒状有機物の化学組成を環境モニタリングの指標として活用していくための研究も行っています.(TS)